Boys Don't Cry

日記なんて退屈でしょうがない。誰かの日記を読むのは楽しいけど、自分の日常の記録なんて、全然つまんない。日記を書いていくと、自分が規定されていくような気がするからかもね。もっと事実だけを記録していけばいいのかな。でも出来事なんて起きたそばから忘れてしまう。覚えてるのは頭の中の思考の流れだけ、あとは空に雲が流れて行く場面とか。

「心変わり」という小説を読んで最高にぐっときた。今日は日記を「きみ」に向けて書くことにする。「きみ」の日記を書きたい、ここで、「きみ」の代わりに。でも、「きみ」のことなんか何もしらないんだ。


この日記にはカウンターもアクセス解析もない。だから一体誰かが日記を読んでいるのか読んでいないのか、この独り言は誰かの元に届いてるのかどうか全然分からない。いっそのこと、書き込んだ五分後にすべて消えてしまえばいいのに。そうしたら、限られた時間内に出会うわたしの言葉ときみという存在は、もっと運命的なものになる。

今日のきみは、ちょっとうんざりした気分で仕事行くためにバスに乗った。いつもバスに乗るときは左足から踏み出す。同じ時間のバスを利用する人々は殆ど見覚えがあるけれど、何年経ってもまだ誰とも言葉を交わしたことがない。君はつり革に掴まって四方をダークグレーの背広に囲まれながら、窓の外をぼんやりみている。外の風景を見続けるにも集中力がいる。きみは何か楽しいことを考えようとする、素敵な異性とこんな晴れた日にでかけることやなにか。空が青い、でも雲はずいぶん高くなって秋の空の顔は確かにさわやかなはずなのに、どこか君をうんざりさせる。

きみはどこかでコーヒーを飲む、オフィスか、通勤途中にあるチェーン店かどこかで。

その後、きみの身になにか途方も無くドラマチックなことが起こってわたしを驚かせてくれますように。
では、今日も楽しい一日を。