不思議の街

やっぱりこの街は不思議な所で、同居人によると彼女もここへ来ると数日は胸が苦しくて切なくなってしまうという。私はよくわからない感情をホームシック?と理解しようと思ったのだけれど、もしかしてこのグラナダという街そのものが持つ何か不思議な作用なのかもしれない。この土地では多くの血が流された。征服し制服され殺し殺される人々。それは民族が信仰する神々の戦いでもあり、イデオロギー戦争でもあった。洗脳装置あるいはエゴの顕現としての巨大建造物、それらはまったく美しく野蛮だ。そしてある場所はまるで北アフリカの路地のごとく迷宮めいて入り組んだ小道が続いていたり、洞窟をくりぬいた放浪する人々の住んだ地区があったり、既に虐殺された人々がかつて住んでいた通りが残されていたり、コロニアルスタイルの屋敷が続いていたりと、この街をあるくことは歴史をトレースすることに似ている。まったく、この小さな土地では血の海で街が流されてしまうくらいの人数が殺されている。そして亡霊たちは、時間の経過なんぞおかまい無しに、まだ街を彷徨っているような気がする。だからきっと、この街は常に人口過密状態なんだ。公式記録には決して記載されないけれど。