10年

ブライトンにいた日本人の友達に、10年ぶりに会う。
10年!

でもなぜか、普通に話すことができる。彼女はとてもユニークで楽しい人だから、笑い転げて楽しんだ。
そして思いがけないことに、10年前に起きたできごとについて、彼女は私に謝罪した。そのことがきっかけで疎遠になっていたのだけれど、それは私も色々と自分にかんして考える契機になった上に、なんというか彼女だけが悪い話でもない。(それにどんなことでもある個人だけが悪いなんてことはなく、更に言えばどんなことでも誰も「悪」ではない)
とても気にかけていてくれたようで、目を見て謝りたかった、と言ってくれた。なんて優しい人なんだろう、と泣きそうになった。

なんだか不思議で素敵。こうして10年たってまた友達でいるのは。

私たちを再び会わせてくれたのは、ロンドンの下宿先の大家さん、ケイ。彼女は去年ガンで亡くなってしまった。私は不義理のかぎりをつくし、幸せではなかったので(楽しいことを伝えることができないから)連絡をとっていなかった。でも彼女はいつも私のことを気にかけていてくれたらしい。友達がハムステッドのホスピスへお見舞いにゆくと、私がどうしてるかを聞いてくれた。そして連絡をくれ、わたしはケイが亡くなる前に、電話で話すことができた。

ケイはスウィンギング・ロンドン時代にローリングストーンズの元おっかけで、バイカーズの不良娘で、シングルマザーで、元アル中とヘロイン中毒だった。私と会った時はニコチンだけだけど。よくキッチンで煙草吸いながらお茶しつつ、色々話をきいたっけ。壮絶な過去を乗り越えた、本当の優しさがあった。気が強そうにみえて物事をはっきり言うタイプだけど、とても繊細で傷つきやすかった。ほんもののレディで彼女はかっこよかった。よく恋をしてたけど、あんまりたちのいい男達ではなかった。ダブとロックステディとトルコの海が好きだった。

なつかしき、ケンティッシュタウンの日々。